百貨店で探そうかとも思ったのですが、せっかく京都に来たのだし、バイヤーが選んだものではなく、自分の目で掘り出し物を見つけたいじゃないですか。そんなわけで、たくさんの窯元が集結してお店を出す「陶器市」を探してみました。
重松康夫さんの作品
引越し直後のナイスなタイミングで開催されたのが、『東福寺~泉涌寺 窯元もみじまつり』です。2021年は11月20日(土)~23日(火・祝)の4日間にわたり開催されました。毎年、この時期に開かれているようです。
楽しかった思い出とともに、窯元もみじまつりのことと当日の様子、購入したお気に入りの器たちとそのお値段について語っていきますね。
『東福寺~泉涌寺 窯元もみじまつり』とは?
『東福寺~泉涌寺 窯元もみじまつり』は、泉涌寺の近くで開催される陶器市。京都駅から1駅という好アクセスです。東福寺から泉涌寺のあたりには、昔から清水焼の窯元が集まっているのだそう。市価の3割~7割引で清水焼が買えると評判で、本当にお得でした。百貨店での販売価格より500円~1000円、ものによってはそれ以上、値引きされている印象です。百貨店やオンラインショップのマージン分ほど、値下げができるのでしょうね。
作家に直接話を聞きながら、器を選べるのも楽しかったです。ちょっとおまけしてくださったり、少しの傷で大幅な値引きをしてくださったり、皆さんとても優しかった。
また、以前はろくろ体験や屋台、スタンプラリー、利き酒なんかもあったそう。コロナ対策のため今回は中止でしたが、その分、陶器の販売に使えるスペースが広くなったとも聞いたので、良くも悪くも、って感じでしょうか。ああ、でも利き酒体験は興味ある。へべれけになって散財するだろうけど……。
開催時期は、毎年11月下旬の連休の頃のようです。詳細は公式ホームページへ。
京焼・清水焼とは?
窯元もみじまつりで販売される器は、「清水焼(きよみずやき)」と呼ばれています。清水焼は、京都の焼き物「京焼(きょうやき)」のひとつ。最近では「京焼≒清水焼」と捉えられることが多いです。京焼は「京都の焼き物」全般を指すもので、工法や作風が決まっているわけではありません。京都では土が取れないので、陶工はそれぞれ独自に土を取り寄せており、素材も工法もさまざま。陶工たちが工夫を凝らし、自分のセンスを発揮した焼き物を、地域でざっくりまとめて「京焼」と呼んでいるのです。
松尾亮佑さんの作品
今回、窯元もみじまつりで感じたのが、作品のオリジナリティの高さです。大きさや重さ、形、彩りが皆さん異なり、作家の美意識が存分に発揮されていました。陶器市というか、アートフェアに近いと思いましたね。じっくり作品を吟味して、お気に入りを買って持ち帰る。アートを買うのと同じです。
器の芸術性が高いのは、京都という美の最高峰でしのぎを削っているからなのかも。他にも、桃山時代の茶の湯文化など、歴史の余韻もあると思います。
窯元もみじまつりに行ってみた
今回購入したのは、こちらの作品。まずは会場へのアクセスを紹介し、その後、各作家さんのブースと買ったお品物について、価格を含めて紹介していきます。
会場へのアクセス
会場の最寄駅は、JR奈良線の東福寺駅または京阪電車の東福寺駅。市バス202・207・208号系統の停留所、東福寺または泉涌寺道からも近いです。東福寺駅までは、JRでも京阪でもたった1駅。しかし、東福寺に行く観光客に揉まれるので要注意です!
東福寺は人気の観光スポットで、紅葉シーズンは特に混雑します。途中までは東福寺に行く人たちと同じ道なので、亀みたいにのそのそ歩きました。
窯元もみじまつりの会場は、泉涌寺の周辺に散らばっています。なので、どこを目指せば良いのかわからなくなりがちですが、「青窯会会館」を目指してください。Googleマップにコピペして検索して、青窯会会館に行きましょう。
青窯会会館には、便利なマップが置いてあります。マップを手に入れたら、いざ会場をめぐりましょう!
重松康夫さん
ここからは買ったものを買った順に紹介していきます。販売ブースの様子は、許可をいただいて撮影しました。まずは重松康夫さん。主に白と黒にカラーがはっきりと分かれたシリーズを作っている方です。ドローイングのような点と線の模様が緊張感を醸し出し、もうこれは絵画だな。抽象画ですね。
重松さんの作品は、既製品には無いサイズだよね、とも感じました。器の形からしてオリジナリティが高いですが、よくあるお皿より一回り大きかったり小さかったりするのが、隠れたポイントです。器の個性を楽しみ、逆算して料理を盛りつけるのが、本物の趣味人なんだろうな~、と作品を拝見しておりました。
どれを購入しようか本当に迷ったのですが、今回はこちらを購入。湯呑にちょうど良いサイズ感です。2600円でした。
外側だけでなく、内側も緊張感が漂う模様が描かれています。
この緊張感、アレクサンダー・カルダーのモビールを思い出すんですよね。絶妙な力加減で点と線が舞っています。本当に芸術。白い面が薄く刷かれたようなのも良い。自然と抽象画がコラボしてるの。もうさ、宇宙だよ、宇宙。
1つ1つ手作りなので、同じサイズのカップにもいろんな模様の作品があったのですが、こちらを選んだのは、透明なお茶の水色を楽しめると思ったから。お茶の水面が白い部分に来るので、お茶の色合いと重松さんのドローイングを同時に味わうことができます。光が屈折するので、水が入るとデザインが表情を変えますね。
重松さんはご自身のインスタに、作品と料理を盛りつけた写真を載せています。器を使ったときのイメージが湧く……というか、料理が美味しそうすぎません? 凄いシズル感。
展示会の情報も、インスタでお知らせしているそうです。要チェック。
白黒の作品のほか、カラフルな作品もありました。絵付けがとても細かいです。でも線が全くブレず、神がかってるんだよな。絵もめちゃくちゃ上手そうな作家さんです。
西出真英さん
続いて、鮮やかなトルコ青色の輝きに吸い寄せられるように、西出真英さんのブースへ。この青が良いんだよなあ。地中海っぽい青色です。空の青さとはちょっと違う、ミネラルが多そうな青。
器の外側は、白や茶色をベースに、ストライプや○などいろいろな模様が描かれています。シンプルで使いやすいデザインですよね。
私が購入したのは、小さめの抹茶碗と箸置き。お茶碗は2400円でしたが、少々傷ありとのことで、なんと1700円に値引きしてくださいました。言われるまで気づかない傷なのに……。
三角形の箸置きは400円です。他、四角形の箸置きもあり、こちらは300円でした。
茶碗のほうは、コロンとした球体のような形。内側は青、外側は白のストライプです。まさに地中海。ギリシャの太陽を浴びているような輝きです。
山のような茶色の模様が良いアクセントになってますね~。
白の釉薬をかけるとき、手で持っている部分には釉薬がかからないので、茶色い部分ができるのだそう。ここも作品の個性が出る部分で、茶色い部分がもっと広い器、狭い器といろいろありました。
お茶碗ですが、ヨーグルトとフルグラを入れた朝食用ボウルとして使っています。いや、めちゃくちゃ相性良くない? 内側の青とヨーグルトの白とのコントラストは清潔で美しいし、フルグラのドライフルーツがさらなる彩りを加えています。最高の取り合わせを見つけてしまった。
三角形と珍しい形の箸置きは、ゆるやかにカーブして掌のように箸先をホールドします。西出さんは、〇や△などシンプルな形のポテンシャルを引き出すのがめちゃくちゃ上手い。
シンプルな形って難しいと思うんです、きっちりしすぎると工業製品みたいになっちゃうから。手作りの良さがなくなってしまう。そうではなく、手ごねの質感によってシンプルをより美しくしているのが、凄いと思うんですよね。
西出さんの器は、JR京都駅西口改札近くにある「パティスリー&カフェ デリーモ京都」でも使われているとのこと。伊勢丹の脇の、エスカレーターを上がったところにある「イートパラダイス」のコーナーです。京都にお越しの際、立ち寄ってみては。
公式のホームページやインスタは無いみたいなので、京都陶器会館のオンラインショップをリンクしておきますね。いろんな作品の写真が見られます。
松尾亮佑さん
器の縁から垂れるような独特の模様は、金属なのだそう。二酸化マンガン、とも仰っていました。器の縁に金属の粉を塗って窯で焼くと、金属が溶けて垂れた模様ができるとのこと。金属の量や温度の高低によって、茶色っぽくなったり、光沢が出たり、表情が変わるそうです。
私が購入したのは、抹茶碗と箸置き。抹茶碗は2700円のシールがありましたが、2400円のシールが貼り直されていました。箸置きは500円です。
抹茶碗はもう、一目惚れでしたね。金属の模様が、淡い緑の薄茶に注がれるところを見てみたい。まるでシロップのように、茶色いしずくが垂れていく様子を想像すると……居ても立っても居られません。即買い。
上から見ると満月のようです。まんまる。
実際に抹茶を点ててみて、使いやすさにも驚きました。まず、とにかく薄くて軽いんです。非力な私でも、片手でひっくり返してお湯を捨てたりできるくらい。
まんまるだし直径もちょうど良いので、茶筅を動かしやすいです。まだ私が器のポテンシャルを引き出し切れていない感じがあるので、慣れたらもっと美味しくできると思います。
箸置きは、綺麗めな直方体です。西出さんの箸置きは手ごね感がありましたが、松尾さんのは金属的に角張ってる。しかし、こんなに小さいのに彫刻のような表情してるの伝わるかな……。
松尾さんも、インスタで作品の写真や展示情報をアップしてます~。
器の形も、絵付けも、完璧ですよね。丁寧な手作業が光ります。そしてセンスの良さ。きっと作家が自分の「可愛いものセンサー」を自覚していて、インプットとアウトプットができる人なんだろうなと思います。
私が購入したのは、取っ手付きのマグ。2200円でした。
海外のタイルのようなデザインが手描きされ、釉薬がふっくら膨らんでるんですよ。もこもこした手触りも大好き。
取っ手の形にまで、こだわりが行き届いています。量産品でも可愛いものはありますけど、こうして細部までこだわれるのは、ハンドメイドならではです。
planpoさんも、インスタで作品の写真や展示情報をアップしてます。見ているだけで幸せな気持ちになるお写真がいっぱい。
予算はどれくらいが良い?
うっかり戦利品自慢をしてしまいましたが、それぞれの価格は並行して書いたとおり。約1万円で器4つと箸置き2つが買えました。独身なのでセットで揃える必要がなく、気に入ったものを一つずつ。松尾亮佑さんの作品
窯元によって価格帯は異なりますが、普段よく使うお皿やお茶碗、マグカップあたりは、2000円~3000円がボリュームゾーンだと思いました。小皿や箸置きなど小さいものはこれより安く、花瓶など大きいものはこれより高くなるイメージです。
「茶碗どれでも500円!」みたいな格安セールもありましたが、そういうプラスチックのケースの中で積み重ねられた器は、あんまり素敵に見えなかったです……。割引率は凄いのでしょうけどね。
planpoさんの作品
きちんとディスプレイされた作品は、2000円~3000円がボリュームゾーン。これを踏まえて、どんな器がいくつ欲しいのか考えれば、自然と予算は決まってくるはずです。(2021年の価格帯ですので、変わるかもしれないことはご容赦ください)
ツイッターでも、陶器市の予算はどれくらいが良いと思うかアンケートを取ってみました。
【アンケート】
— 明菜(物書き、美術ライター) (@Akina_art) November 8, 2021
やきもの好き・アート好きの皆さん!
京都で陶器市に行くとしたら、皆さんなら予算はいくらくらい用意しますか?
記事にしたいので、ぜひ教えてくださいませ。
(今回は『窯元もみじまつり 大陶器市』に行く予定。市価の3〜7割引との噂です)
1万円の得票が最も多くなりましたが、2万円、5000円の人も多いですし、5000円~2万円に票が集中した、と言えるかな。
今回、窯元もみじまつりに行った感じでは、5000円だとちょっと少ないかも……。でもセール品を中心に購入するなら充分ですね。
1万円から2万円の予算があれば、かなり充実しますよ! 4人家族でおそろいのお茶碗を買っても、おつりが来ると思います。
それから、窯元もみじまつりで使える1万3000円分のお買物券が、数量限定で1万円で販売されています。たくさん買う! と決めている人は、お買物券を狙って朝から行ってみるのも良いかも。
まとめ
今回の窯元もみじまつりも楽しかったし、次は他の陶器市にも行ってみたいところ。コロナでいろんなイベントが中止になっているのですが、何とか持ち直して欲しい……!窯元もみじまつりは、京都駅から1駅とアクセスしやすい場所で開かれるのも嬉しいポイント。気になる方は、公式ホームページで次回の日程などをチェックしてくださいませ。
東人が京都ライフを発信する『和文化の定理』
千葉生まれ千葉育ちの美術ライター、明菜は京都に転居しました。日本の文化や伝統を学び、京都に染まって帰郷するべく、『和文化の定理』では京都のリアルな暮らしを発信します!
『和文化の定理』のSNSでは、記事に載せられなかった写真や、お蔵入りのネタも発信。
◆ツイッター⇒Follow @Akina_art