能の『紅葉狩』のあらすじと見どころを紹介!初心者も楽しめる演目を予習しよう

2020年10月30日金曜日

伝統芸能を鑑賞しよう

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紅葉狩 鬼揃


今度、を見に行くことになりました。初めてのお能鑑賞なので楽しみ99%なのですが、1%ほど、どう楽しめば良いのか分からぬまま演目が終了したらどうしよう…と不安に思っています。


その公演は、観世清和さんコシノジュンコさんによる『観世清和×コシノジュンコ 能+ファッション “継承される伝統と現代の融合”』で、普段の公演とは違うのですけれども。第1部がファッションショー第2部が能の演目「紅葉狩」、という特別な構成です。


観世清和さん、コシノジュンコさん


公演の記者発表会に行ってきたので、その写真を掲載していきますね。公演について詳しくは、gooいまトピでお伝えしました。
【奇跡のコラボ】観世清和×コシノジュンコの舞台が凄い!オンライン配信も!


今回の公演はオンラインでの配信もあり、能を見たことがない初心者にも間口が広いと思います。私と同じように能を楽しめるか不安な人も多いと思うので、この記事は予習編として、「紅葉狩」のあらすじと見どころをまとめていきます!

能の演目「紅葉狩」のあらすじ

戸隠山の紅葉

先に「紅葉狩」のあらすじをまとめますね。その後、見どころになりそうな部分を、能の基礎知識を交えながら紹介していきます。あらすじを先に分かっておくと、見どころもイメージしやすくなると思います。


セリフが現代の口語ではなく古文の言葉なので、能初心者がいきなり演目を見ても、ちんぷんかんぷんになってしまうと思われます。古文に自信が無い方は、あらすじを予習してから本番を観た方が良いのではないでしょうか。ストーリーをなんとなく把握していれば、謡(うたい)や舞を鑑賞する余裕も出てくると思います!

「紅葉狩」前場

戸隠山の奥へ紅葉狩りに出かけた上臈たち美女一行は、谷川のほとりで宴会を始めました。そこを通りかかった平維茂(これもち)と従者は、通り過ぎようとしたところを上臈に引き止められ、酒席に加わります。


維茂は酔いつぶれ、眠ってしまいました。上臈は「目を覚まさずによくお休みあれ」と言い残して姿を消してしまいます。


※文章だと微妙に分かりづらいですが、上臈がシテ(主役)、維茂がワキ(脇役)です。

「紅葉狩」中入

ぐっすり眠る維茂の夢の中に、武内の神が現れます。「上臈はこの山に住む鬼神で、あなたをたぶらかして命を取ろうとしている。この剣で鬼を退治しなさい」と言い、太刀を置いて去りました。

「紅葉狩」後場

夢のお告げを受けて目を覚ました維茂の前には、もはや美女の姿ではなく、恐ろしい形相に変化した鬼たちがいました。維茂は太刀を振るい、戦います。


激闘の末、維茂は鬼神を退治することができ、一件落着となります。


以上がざっくりしたあらすじです。「紅葉狩」は、話が進むにつれて女が鬼で罠を仕掛けたことが分かったり、その山が戸隠山であることが武内の神によって明かされたり、後から真実が分かる構成になっているんですよね(戸隠山には鬼伝承がある)。


つまりネタバレととても相性が悪い演目なのですが、どうかご容赦を…。

能はどこを見る?「紅葉狩」注目すべき見どころ5選

観世能楽堂 GINZA SIX(公演記者会見前に撮影)

能や「紅葉狩」について調べていく中で、ここに注目したら良いのではないか?というポイントがいくつか見つかりました。和文化の定理が特に楽しみにしているポイントを5つ紹介していくので、能の初心者さんはぜひご参考ください!

維茂と鬼の激しい戦い

一番の見どころは、後場で行われる維茂と鬼たちの激しい戦闘ではないでしょうか。「紅葉狩」が能の初心者にも親しみやすいと言われるのは、派手な激闘というアクション要素があるからだと思います。


能にはすり足で歩く優雅なイメージがあるので、「激闘」ってどんな感じなんだろう?と想像できずにいます。


というか、シテ(主役)が負けてワキ(脇役)が勝つんですよね。派手な装束のシテの方が負けるので、負けっぷりと言うのでしょうか、敗北の演技にも注目したいです。

美女たちの舞

前場の大きな見どころとなるのが、鬼という正体を隠した美女たちの舞です。舞の終盤では、正体が鬼であることをほのめかすように、激しい舞になるのだとか…!


紅葉狩 鬼揃


「紅葉狩」の前場の見どころが美女たちの舞で、後場の見どころが維茂と鬼たちの激闘、と言われています。優美な舞と激しい戦いの対比が面白いのだそう。

能面の表情

能面は角度によって表情が変わる、日本古来の美術品でもあります。演者の表情を隠すものではなく、役柄を表現するものとして面も鑑賞したいところです。


能面は、男性である能役者が人間でないものや女性、老人に変身するためのものです。面にはさまざまな種類があるのですが、どれを選ぶかによって演目の成否が決まることもあるそうです。


「紅葉狩」では、上臈にはさまざまな女面が、鬼女には一般的には般若の面が使われます。美女から鬼への変貌がどのような面で表現されるのか、とても楽しみです。

前シテと後シテのギャップ

能のストーリーでは、主役(シテ)が前場では仮の姿で登場し、後場で正体を表すことが多いそうなんですね。前場でのシテを「前シテ」、後場でのシテを「後シテ」と言います。


「紅葉狩り」では前シテが美しい女性の姿をした鬼の化身、後シテが鬼となり、装束も面も全く異なります。外見もそうですし、舞や仕草の演技もかなりのギャップがあるはず。1人の能楽師がどのように前シテと後シテを演じ分けるのか、重要な見どころではないでしょうか。

コシノジュンコさんが手掛ける装束

私が観る今回の公演は、能とファッションのコラボの一つとして、コシノジュンコさんが装束の一部を手掛けています。通常とは違う特別な装束なので、とても楽しみ。シテの装束をデザインした、コシノさんの原画がこちらです。


第二部紅葉狩 装束デザイン画


現代の感性を取り入れることには、観阿弥・世阿弥の血を引く二十六世観世宗家 観世清和さんも前向きなことを記者発表会で仰っていました。「祖父や父と同じことをやっていても意味がない」「約700年の歴史の中で、能はその時代の社会情勢を取り入れ、現代人として取り組んできた」といったこともお話しされています。


伝統のお能と現代のファッションセンスのコラボも楽しめるのが今回の公演の重要なポイント。今回のコラボが成功すれば、能の今後の展開も変わってくる可能性ありますよね。

【まとめ】「紅葉狩」は能の初心者も親しみやすい!

能の演目「紅葉狩」のあらすじと見どころを紹介してきました。能の初心者でも親しみやすい構成とのことで、とても楽しみです。

二十六世観世宗家 観世清和さん


調べていくと、ここで紹介したことだけでは全く足りないのが分かるのですが…例えば、能には5つの種類があり、5つを1セットとして公演するのが従来のやり方だ、とか(最近は時間の関係で3つを演じることが多いらしい)。ちなみに「紅葉狩」は5番目の演目です。


流派によって良しとする表現が異なることや、能楽師によっても演技に違いがあることなど、とても奥が深い芸術です。1記事では魅力を伝えきることはできないですし、私もまだまだ調べたりないことだらけです。今回の公演をきっかけに能の鑑賞にも興味を持ち、見識を広げていきたいと思っています。


デザイナー コシノジュンコさん


『観世清和×コシノジュンコ 能+ファッション “継承される伝統と現代の融合”』の会場は東京・銀座の観世能楽堂(GINZA SIX)ですが、オンラインでも配信されます。オンラインならかなり敷居が低いと思うので、能やファッションショーの鑑賞デビューにピッタリではないでしょうか?ぜひこの公演を一緒に楽しみましょう!


※追記
11月9日の公演に行ってきました!
内容を詳しくレポートしたので、こちらの記事もご覧ください。
能の『紅葉狩』のあらすじと見どころを紹介!初心者も楽しめる演目を予習しよう

公演情報

観世清和 × コシノジュンコ 能+ファッション “継承される伝統と現代の融合”
公演日:2020年11月9日(月)
時間:昼の部13:00/夜の部17:00
会場:観世能楽堂 GINZA SIX 地下3 階(中央区銀座6-10-1)
チケット: 全席指定20,000 円 https://eplus.jp/sf/detail/3314330001
Streaming+(配信チケット):2,500 円 https://bit.ly/3jVlMmk


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観世清和さんと内田樹さんの対談、面白かったです。


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