【イベントレポ】『観世清和 × コシノジュンコ “継承される伝統と現在の融合”』【最高でした】

2020年11月24日火曜日

伝統芸能を鑑賞しよう

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11月9日公演 ©️花井智子


能とファッションを融合させた舞台「観世清和 × コシノジュンコ “継承される伝統と現在の融合”」が2020年11月9日に観世能楽堂にて開催されました。


能もファッションショーも初めて拝見したのですが、なんて面白いのでしょう、すっかり魅了されてしまいました。


11月9日公演 ©️花井智子


この記事ではイベントレポートのような形で、公演の内容と良かった点を紹介していきます。公演を観られなかった人にも読んでいただき、日本の伝統文化に関心を持つきっかけにしていただけたら、と思います。


公演は第一部と第二部の2分構成でした。さっそく内容を紹介していきます!

第一部 パフォーマンスとファッションショー

第一部は観世流能楽師の分林道治さんによる「風神雷神」のパフォーマンスと、コシノジュンコさんによる日本の美意識を表現したファッションショーです。


公演は「風神雷神」のパフォーマンスから始まったのですが、能楽師の振る舞い方が独特で、一気に能の世界に引き込まれてしまいました。すり足でサーーーーッと滑るように動いたと思えば、ドンドンと足を踏んで観客の心臓を跳ねさせるような音を出すこともあり、幅広い演技に釘付けになります。


「これが伝統芸能か…!!」と目の前で、生で展開される身体の表現に震えました。すり足での移動や派手な衣装のためか、同じ人間とは思えず、異形の者のパフォーマンスに見えたんですよね。瞬時に非日常の世界に連れて行ってくれる、凄まじい演技でした。


11月9日公演 ©️花井智子


コシノジュンコさんのファッションショーに移ると、優美なモデルさんたちが大勢登場します。モデルさんたちもすり足を意識していたようで、足元が乱れない静かなファッションショーでした。


舞台の目付柱が外され、モデルと衣装がどこからでもよく見えるようになっています。目付柱が外せるの、初めて知りました…!


11月9日公演 ©️花井智子


モデルさんたちはコシノさんがデザインした着物風のドレスを纏っています。着物のユニークな部分といえば、大きな袖ではないでしょうか。袖の形や柄を見せるためか、モデルさんたちは両手を広げて高さをキープした状態で、舞台に立っていました。かなり大変そう…!


コシノさんの着物ドレスは、濡れたような光沢があって優美さが際立っていました。特に、光を吸収する黒と、ギラリと反射する金のコントラストにはドギマギします。日本の昔ながらの美意識と、現代的な艶かしさが混ざり、1つ次元の高いところへ昇華したような美しさがありました。


11月9日公演 第一部に登場した観世三郎太 ©️花井智子


ショーの最後には、コシノさんによる衣装を身につけた観世三郎太さんも登場されました。身のこなしがファッションモデルとは全く異なり、人間とは別の生き物のように見えました。能楽師の表現力、凄すぎる。


また、第一部にはプロジェクションマッピングが取り入れられており、光と映像の効果も面白かったです。黒い雲のような映像が現れたときは、能楽堂ごと外へワープしたように感じられました。


11月9日公演 ©️花井智子


コシノさんのファッションショーでは、日本の伝統の美意識をどのように守り、伝えるかに対する彼女の回答が現れているように感じました。例えば、着物ドレスは着脱が簡単で、従来の着物の着付けに時間がかかる弱点を克服しています。コシノさんは伝統を尊重し、自分の世界の中で生かせるデザイナーなのですね。

第二部 仕舞「船弁慶」、能「紅葉狩 鬼揃」

第二部は、仕舞「船弁慶」と、二十六世観世宗家 観世清和さんによる能「紅葉狩 鬼揃」です。仕舞(しまい)とは、面や装束を付けずに舞う演目です。


「船弁慶」は、義経や弁慶たち一行のお話です。兄の頼朝に追われることになって先を急ぎ、瀬戸内海を船で移動する途中、悪天候に見舞われ、さらに壇ノ浦に沈んだ平知盛の怨霊が現れます。怨霊(シテ=主役)は義経を海に沈めようと、なぎなたを振り回して襲いかかります。


11月9日公演 ©️花井智子


なぎなたを操るパフォーマンスが大迫力で、能初心者の私にとってもエキサイティングでとても楽しかったです。しかし、能の言葉は現代語ではなく古語なので、一度聞いただけではよく分からない…と自信を無くしました。所々、人名は分かるのですが、ストーリーはあまり把握できておらず、公演後に調べて記事を書いております…。


「船弁慶」の次は、いよいよ観世清和さんがシテを演じる能「紅葉狩 鬼揃」です。こちらはあらすじをしっかり頭に入れて挑んだので、能の世界観に没入できました!


「紅葉狩 鬼揃」のあらすじはこちらの記事で紹介しました。
能の『紅葉狩』のあらすじと見どころを紹介!初心者も楽しめる演目を予習しよう


前半は宴会をする美女一行に平維茂が出会い、維茂が寝落ちしてしまうゆったりした展開。美女たちが交代で舞を披露するのですが、最後は曲調と舞の雰囲気がガラッと代わり、ただならぬことが起こる未来を暗示します。


11月9日公演 ©️花井智子


美女一行が去ってからも、眠り続ける維茂。シテはコシノさんがデザインした「塚」という舞台装置の中に入り、衣装を着替えます。塚で外からは見えないとはいえ、舞台の真ん中で着替えるのだから、見ているこちらもハラハラしました。


維茂の夢に武内の神が現れて太刀を与えた後、鬼に変身した美女たちが戻ってきたら、戦いがスタートします。シテはコシノさんによる衣装を身につけ、鬼となって維茂の命を奪おうとします。


11月9日公演 ©️花井智子


想像していたよりも落ち着いた戦いだったのですが、シテがガクッと事切れるシーンに驚きました。鬼が退治されるシーンなので、大きな身振りで倒れるのかな、とイメージしていたのですが、全然そうじゃなかったです。静かに終わっていきました。


この静かな演技が、能の魅力の一つなのではないか、とも感じました。どうも私たちはハリウッドのアクション映画のような派手な演出に慣れ、より激しいものを追い求めがちですが、美や雅があるのはもっと静かなところではないでしょうか。


11月9日公演 ©️花井智子


今回初めて能を観て、演者と囃子方(音楽わ演奏する人たち)が同じ舞台上にいる、というのが地味に衝撃だったんですよね。西洋のミュージカルやオペラだと、舞台上には演者だけで、オーケストラは隠されているので、「同じ高さのところにいるの!?」と驚いたんです。


しかし、全員が同じ舞台にいるからこそ、能独特の結束が生まれているのではないか、とも感じました。演技と音楽が静から動に切り替わるタイミングが、誰が指示しているわけでもなさそうなのに、ぴったり一致しているんです。舞台上の全員が1つの生き物であるかのように、呼吸が揃っていました。


あと、初めて観る演目の前には、予習が絶対必要だとも思いました。すべては聞き取れないし、聞き取れても昔の言葉なので意味が分からず…いくら演技という身体のパフォーマンスがあるにしても、全く予習せずに見たらちんぷんかんぷんだと思います。

【まとめ】新たな好奇心の世界が拓けました!

11月9日公演 ©️花井智子

能もファッションショーも初体験だったのですが、とても楽しい公演でした!せっかく触れることができた世界なので、これからも能を始めとする伝統芸能の舞台に足を運んでみたいです。


今回の公演「観世清和 × コシノジュンコ “継承される伝統と現在の融合”」を主催したのは、大人のための知的好奇心マガジン「ACT4」を発行する株式会社インプレザリオです。


「ACT4」の最新号は沖縄特集です。ラグジュアリーなホテルのみならず、琉球舞踊、琉球古典音楽を取材した記事もあり、沖縄の歴史へのリスペクトも感じるマガジンとなっております。僭越ながら、「和文化の定理」のコンセプトとも近しいものを感じました。


最新号の「ACT4」も要チェックです。良かったらご覧くださいね! 


株式会社インプレザリオ:www.impresario.co.jp


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